世界の音楽情報誌「LATINA」×熊本シティエフエム791「SERENA SERATA」×蔦屋書店熊本三年坂

世界の音楽情報誌「LATINA」
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熊本シティエフエム791「SERENA SERATA」
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蔦屋書店熊本三年坂
熊本シティエフエムで毎月金曜日17:00-18:55で放送されているワールドミュージック専門番組「SERENA SERATA」で
毎月1回世界の音楽情報誌(今はWeb版)「LATINA」が選ぶする3曲をお届けしています。
蔦屋書店熊本三年坂では、LATINAの花田勝暁氏のコメントと共に、収録アルバムをご紹介します。
今月の3曲

アーティスト名:Clala Nunes(クララ・ヌネス)

曲名:Morena De Angola(モレーナ・ヂ・アンゴラ)

LATINA編集部 花田勝暁氏コメント

4月2日は、日本における80年代サンバブームの立役者のひとり、「戦う女性歌手」とも言われたクララ・ヌネス(Clara Nunes)の命日でした。
1983年4月2日にリオでなくなりました。足にできた静脈瘤の簡単な手術の際に麻酔投与ミスで死亡。40歳の若さでした。

1943年8月12日にミナスジェライスのパラオペバ(Paraopeba)で生まれたクララは、1968年の「Você passa e eu acho graça」で人気歌手の仲間入り。
作詞作曲家のパウロ・セーザル・ピニェイロ(Paulo César Pinheiro)と結婚し、「Portela na avenida」など、パウロ・セーザル・ピニェイロと沢山のヒット曲を産みました。
また、カンデイア作「Canto de areia」、シコ・ブアルキ作「Morena de Angola」、ジョアン・ボスコ&アルヂール・ブランキ作「Nação」なども、彼女の代表曲です。
今回は彼女の産んだ現在まで歌い継がれるヒット曲の中から、「Morena de Angola(アンゴラのモレーナ)」について紹介します。

アンゴラは、ブラジルと同じく宗主国がポルトガルで、公用語もポルトガル語です。
アンゴラは、1961年からアンゴラ独立戦争を戦い1975年に独立を達成しましたが、1975年から2002年まで、アンゴラ内戦と呼ばれる内戦が続き、内戦による死者は360万人に及びました。
国土には数多くの地雷が残されたままで、20年近く経った今もなお多数の死者・負傷者を出しています。悲惨な内戦でした。
1980年にシコ・ブアルキ(Chico Buarque)が、クララ・ヌネス(Clara Nunes)に提供した「Morena de Angola」も、この内戦に関係した曲です。
1980年5月、シコ・ブアルキ(Chico Buarque)は、ブラジルの一流のポピュラー音楽の音楽家を集めて、アンゴラで連続コンサートを行いました。目的は、アンゴラに病院を建設するためでした。
プロジェクト「Kalunga」と名付けられたこのプロジェクトには、以下の錚々たる面々が参加しました
:Dorival Caymmi, Ivone Lara, Elba Ramalho, Edu Lobo, Wanda Sá, Francis Hime, Olívia Hime, Miúcha, Quinteto Violado, João Nogueira, Djavan, Martinho da Vila, Geraldinho Azevedo, Rui(MPB-4), Novelli, João do Vale, Clara Nunes.

コンサートに出演したクララ・ヌネスは、シコ・ブアルキに次のアルバムに収録するためにアフリカをテーマにした曲を作曲して欲しいと依頼しました。
こうしてシコ・ブアルキが書き上げたのが、「Morena de Angola」です。
このサンバで描かれたモレーナ(Morena|褐色の女性)は、ダンスと料理が上手な他に、内戦で戦う戦士でもありました(より具体的には、ソビエト連邦、キューバ、南西アフリカ人民機構SWAPOの支援受けて戦っていたアンゴラ解放人民運動MPLAのメンバーとして描かれている。2002年に内戦に勝利したのもMPLA)。

「Será que ela não fica afoita pra dançar na chama da batalha(戦いの炎の中で踊りたくて仕方がないのだろうか)」
「passando pelo regimento ela faz requebrar a sentinela(連隊をくぐり抜け、看守の兵を魅惑する)」
という歌詞は、当時のアンゴラの内戦を暗示しています。

また、この曲で、シコは、「chocalho」「cochicho」「cochilo」「ginga」 「 batuque」といったといった、ブラジルでもよく使われる言葉の中から、アンゴラで最も話されている2つの言葉であるキンブンダ語(quimbunda)やキコンガ語(quiconga)を起源とする言葉を数多く使いました。

アーティスト名:Pedro Mirandai(ペドロ・ミランダ)

アルバム名:Da Gávea para o mundo

曲名:Samba da Gávea(サンバ・ダ・ガヴィア)

LATINA編集部 花田勝暁氏コメント

3月26日にリリースされたサンビスタ、ペドロ・ミランダ(Pedro Miranda)の4枚目のソロ・アルバム『Da Gávea para o mundo』の収録された曲です。2016年の『Samba original』に続くアルバムです。
ペドロ・ミランダは、00年代のリオデジャネイロのラパ地区のサンバ・ルネッサンスで頭角を現したサンビスタの1人。
顔は芸人のデニスの植野行雄にそっくりです。皆さんが「サンビスタ」と聞いてイメージするより、白人寄りの褐色の肌をしています。
00年代のサンバ・ルネッサンスでは、サンバを愛する中産階級出身のサンビスタも才能を認められました。
2017年6月から、ペドロ・ミランダは、リオの「Gávea(ガヴィア)」という地区で、友人たちと「Roda de Samba(ホーダ・ヂ・サンバ|サンバの輪)」をスタートしました。
「Samba da Gávea」と名付け、毎週月曜に開催していました。「Roda de Samba」は、テーブルを囲んで輪になって座って、レパートリーも決めずに、好きなサンバを持ち寄って演奏するスタイルです。その周りを聴く人が囲ったり、囲まなかったり。「Samba da Gávea」は、すぐに話題になりました。
「Samba da Gávea」から派生して、水曜日には「Forró da Gávea」(こちらはフォホーの日)も行われるようになっていました。
密になる環境なので、現在パンデミックで中止されていますが、「Samba da Gávea」を追ったドキュメンタリー映画『Samba da Gávea – Prendi meu coração nesse lugar』が先日完成しています。

今回紹介した楽曲は、まさにタイトルが「Samba da Gávea 」と付けられていますが、録音には、「Samba da Gávea 」の常連メンバーである、アルフレッド・デル=ペーニョ(Alfredo Del-Penho)や、ジョアン・カヴァルカンチ(João Cavalcanti)らも参加しています。
ハーモニーの重なりが心を落ち着けてくれるような、軽快なサンバになっています。

アーティスト名:Ruben Rada & Carlinhos Brown (ルベン・ラダ & カルリーニョス・ブラウン)

アルバム名:As Noites do Rio

曲名:Chão da Mangueira(シャオン・ダ・マンゲイラ)

LATINA編集部 花田勝暁氏コメント

ウルグアイのカンドンベ・マスター、現在77歳のルベン・ラダがニューアルバム『As Noites de Rio / Aerolíneas Candombe(リオの夜 /エアライン・カンドンベ )』を発表しました。
アルバムのタイトル通り、ブラジルがテーマのアルバムです。全曲ポルトガル語です。

なぜ、今、ブラジルがテーマなのか?

ルベン・ラダの母親カルメン(Carmen)は、ウルグアイとブラジルの国境の町、サンタナ・ド・リヴラメント(Santana do Livramento)で生まれ、8歳の時に、ウルグアイのモンテビデオに引っ越してきたといいます。
カルメンは、祖国に戻ることはなかったそうです。今、ラダは、母カルメンの「魂」をブラジルに返したいと考えて、このアルバムを作ったと言います。
「母に敬意を表せたこと、ホナルド・バストスとカルリーニョス・ブラウン(2人ともブラジルの音楽家)に出会えたことをとても嬉しく思います。
物事は来るべき時に来るものだと思います。私は生涯、自分の名字を父であるラダに捧げてきましたが、私は父と一緒に育ったわけではなく、母と一緒に育ちました。父と会ったのは、人生で5回ほどです」(ルベン・ラダ)

このアルバムの楽曲を書いたのは、ブラジル人の作詞家、ホナルド・バストスです。
「彼は歌詞を書くのではなく、詩を書くんだ。彼は本当に天才だよ」

アルバムのサウンドは基本的にサンバとカンドンベの間を行き来し、南米で発展してこの2つのアフロアメリカンのリズムに橋をかけています。
カルリーニョス・ブラウンと出会ったのは、カルリーニョスが、モンテビデオを訪れた際で、その夜のカンドンベのセッションを思い出して、今日紹介する曲「Chao da Mangueira(マンゲイラの地面)」をルベン・ラダは作曲しました。

「明るさ、敬意、音楽性など彼(カルリーニョス)が心を込めて作ったものに触れて私たちは感動しました。本当に、天才ですね。私たちはこの人に恋をしているのです」(ルベン・ラダ)

世界の情報誌「LATINA」

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熊本シティエフエム791

毎月金曜日 17:00-18:55
パーソナリティ:久間 珠土織

大人の魅力を、落ち着いた雰囲気で流す番組。
フレンチ・ブランジリアンミュージック・ラテン・ハワイアン・ヒーリング・カンツォーネなど色々な音楽を、様々なゲストを迎えてお送りしています。